デジタルデータ化による創期こけしの再現

 

本研究は、こけし創生に最も近い明治期に創られた「創生期こけし」のデジタルデータ化を通して、描線や描彩、形態的特徴を抽出し、経年劣化による損傷や退色が著しい部分を補った全体像を再現し、こけし創生期のプロセス解明に迫ることを目的とする。

こけしは、江戸時代末期に宮城県で創り出された東北地方固有の伝統工芸品である。これまで多くの研究者・蒐集家がこけし創生期の実態解明に取り組んできたが、古い時代のこけしは経年劣化による損傷や退色が著しく、その模様の多くは肉眼で見えにくく、検証が難しい。また、これまでのこけし研究は、古老からの聞き取りや古文書、資料による歴史的調査が中心であり、デジタル機器を用いた検証やデジタルデータでの記録、保存は、宮城県内の研究機関においても行われていない。

本研究では、デジタルデータ化によって古い時代のこけしを再現する。対象はこけし創生期の実態解明において重要な位置にある「創生期こけし」である。赤外線デジタルカメラでこけしの撮影を行い、描線や描彩をデジタルデータとして抽出し、損傷や退色部分を補った全体像を再現する。こけしが創られた当時の姿を再現できれば、創生期の実態解明に迫ることが可能であり、こけし研究への進展に寄与できるだろう。

 本研究を東北の伝統文化の伝承および生産額の低迷や後継者不足などの深い問題意識を抱えているこけし産業の存続基盤を強化推進する契機としたい。

 

この研究は、2020年度 東北生活文化大学 研究奨励賞 受賞し助成を受けたものです。